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特集「OH MY BRAND!」
「世の中にないものを創りたい」渦巻き続ける熱い想い

FASHION

株式会社LD&K
水野 直人(クリエイティブディレクター)

CDジャケットや装丁デザインをはじめ、様々なジャンルのクリエイションでその手腕を発揮している水野直人氏。近年は書籍やCDの企画・制作なども精力的に手がけており、自他ともに認める“わんぱくディレクター”として活躍中だ。

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株式会社LD&K

水野 直人

1997年ファッションデザイン学科卒業。雑貨企画販売、広告代理店等を経て、飲食から音楽、書籍と多岐にわたってマネジメントを行う株式会社LD&Kにて、デザイナー、ディレクターとして活躍。2011、2012、2015年には、ミュージックジャケット大賞にノミネート。『名古屋モーニング図鑑』『ラブ・セクササイズ』(いずれも新書)や、『Sound of EXtasy』(CD)を企画。最近では『シブヤビール』をプロデュースし、注目を集める。

『シブヤビール ENERGY ~ MACA』の仕掛け人

常にあるのは「世の中にないものを創りたい」という想い。浮かんだアイディアを形にしていくプロセスは「連想ゲーム」。発想は数珠つなぎのように連なり、あらゆる方向へと広がってゆく。

水野氏の今最もホットな仕事といえば、渋谷の新名物『シブヤビール ENERGY ~ MACA』のプロデュースである。渋谷の街から、東京を、日本を元気にしたいとの想いを込めた渾身のプロジェクトは、「“これぞ渋谷みやげ”といわれるような、名物品を創ろう」というコンセプトのもとに始動した。ヒントになったのは飲み会の席での雑談。「ビール、いいんじゃない?」という何気ない声だった。とはいえ、単なる地ビールをつくるだけではインパクトがない。そんな時、たまたま隣のデスクの上に置いてあった「マカ」を発見。「そういえば、エナジードリンクは流行ってるけど、エナジービールってまだないな」とひらめいた。エネルギッシュでゴチャゴチャッと雑多な雰囲気を持つ渋谷の街を表現するのにハマるのでは、と。

かくして、元気の源マカをブレンドしたパワフルで爽やかなオーガニック・クラフトビールが誕生。ネーミングはひねらずストレートに、ラベルはオーガニックのイメージを大切に、シンプルなモノトーンで仕上げた。

発売日は2015年4月28日。4・28は言わずと知れた“シブヤの日”だ。これ以上ないメモリアルデーに発売したことも相まってメディアの食いつきも上々。「予想以上の反響で、今までの自分の仕事の中で最高の手応えを感じている」と充実感あふれる笑顔で語る。今後はこのブランドが真の渋谷名物になるよう、しっかり育てていくのが目標。「2020年の東京オリンピックに向けて展開を広げていきたい」。

ショップ店員から店長、そして待望の企画室へ

スタートは雑貨店の販売員だった。モード学園のファッション雑貨専攻を卒業後、雑貨・小物の企画会社である株式会社スーパープランニングに入社。同社が運営する雑貨店で販売業務に従事するが、「どうしても企画もしてみたくて」とことあるごとにアピールしていた。「事務所の引っ越しがあるといえば、手伝いに行くとかね。で、おとなしい新人が多い中でわちゃわちゃと騒いでいたら、何となく目に留まったようで」、新しい雑貨店を出す際に提出した企画書が採用され、お店を任されることになる。まだ20代前半、ノウハウなどまったくなかったが、1人で海外に買い付けに行くなど、持ち前のバイタリティとフットワークの良さで店を軌道に乗せ、程なくして念願の企画室への異動がかなった。

その後、縁あって広告代理店へ転職。おもちゃの企画会社を経て、現在の会社に入社する。デザイナーとしてキャリアを積み重ねる中で「もっと新しいことをやってみたい」と注力し始めたのが、自ら企画し、制作をする仕事だ。名古屋特有の食文化であるモーニングにスポットを当てたガイドブックやニューハーフによる恋愛指南本、女性を誘うためのコンピレーションCDなど、ユニークな発想による企画ものを世に送り出し、ヒットを連発。自信をつけ、満を持して取り組んだのが、先に述べた『シブヤビール ENERGY ~ MACA』なのだ。

学校は「プール」社会は「海」だ

モード学園時代のことを尋ねると「自分も含めどことなく浮世離れしている人が多くて、毎日面白かった。忙しかったけどね」と笑顔。皆で何かをするのが好きだったので、グループ制作が特に楽しく、イベントでは司会を買って出るなど、先頭を切って盛り上げるタイプだったとか。当時の仲間とは、20年近く経った今も良き友だちだ。「皆それぞれの環境の中でポジションを築いてバリバリやっているので、会うと刺激になる」。

特別講義の講師を務めるなど、学園を訪れる機会の多い水野氏だが、学生たちから「遊んでもいいんですか?」という質問が多い。「いや、遊ばないとダメでしょ。勉強は大事。でもそれだけでは世の中は成立しない」と、声のトーンがグッと上がる。そして「例えるなら学校はプール。守られていて波も立たない。対して社会は海。囲いはないし、浅いのか深いのかわからないし、波もある。遊びって波のようなもので、ここは危ない、次はきそうとか…そういう感覚を磨いておくことは必須」と続けた。さらには自身の経験もふまえ、バーチャルではなくリアルにつながる大切さを力説する。「パソコンさえあれば誰でも得られる情報なんて価値はない。会って話す、興味のある場所に足を運ぶ、音楽だったらライブに行くとか。インプットよりもいかにアウトプットできるかだと思う」。そのようにして世界を広げてきた水野氏ならではの後輩たちへの金言だ。

※卒業生会報誌「MOGA PRESS」70号(2015年11月発刊)掲載記事