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特集「OH MY BRAND!」
すべてはいい服を創るために
自分を磨き、高めて、ブランドを発展させていく

FASHION

西崎 暢

マニッシュな中にエレガンスを散りばめた、洗練された女性のためのブランド、『Ujoh』を手がける西崎暢氏。パタンナー出身である西崎氏ならではの視点による大胆なカッティングと緻密なデザインから生み出される美しいラインのドレスは、絶妙なバランスで女性をよりいきいきと輝かせる。

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西崎 暢

2002年ファッションデザイン学科卒業。株式会社ヨウジヤマモトに入社し、『Y's for men』、『Yohji Yamamoto pour homme』のパタンナーとして7年間勤務した後、2009年に独立し『Ujoh』を設立。2014年春夏より、東京コレクションに参加。2015年、世界での活躍が有望視される若手の新鋭ファッションデザイナーに贈られる「DHLデザイナーアワード」(第9回)を受賞。

パタンナー視点ならではの洗練された服づくり

『Ujoh』を、そして西崎氏を語る際に、外せないのは、『Yohji Yamamoto』の存在だ。言わずと知れた世界に名だたる一流ブランドであり、西崎氏がファッション業界への第一歩を踏み出した場所。モード学園を卒業後、『Y's for men』、『Yohji Yamamoto pour homme』のパタンナーとして濃密な7年間を過ごした。

世界中のファッションクリエイターたちから羨望と注目を集めるグローバルブランドへの就職については、「ラッキーだった」と謙遜するとともに、「当初はアルバイト枠という話だったこともあり、有名ブランドだし、プラスになることも多いだろう」と、軽い気持ちだったことを打ち明ける。ところが、入社後にその考えは一変。世界トップレベルの仕事を目の当たりにして純粋に感動し、ブランドの持つパワーの虜に。そして同時に「何となく洋服が好き、ものを創るのが好き…という感じでふわっとしていた自分に、突然スイッチが入ったような…」。文字通り、覚醒したのである。そこからは、この素晴らしいブランドを支える一員として、求められる役割を果たせるよう邁進する日々。パタンナーの仕事にのめり込み、無我夢中で技術を磨いた。

2009年にブランド設立。模索しながら進んできた日々

積み上げたキャリアを土台に『Ujoh』を立ち上げたのは、それから7年後のこと。「確たる意思をもって独立したわけではないが、振り返って考えれば、自分で創りたいものが見えてきて、創りたいという気持ちが芽生えてきて…それが会社の作風とは別のものだったということかもしれない」。言葉を選びながら丁寧に答える様子が、妥協なく服づくりに向き合う姿に重なる。そして「パタンナーとしてここまでできるようになりたいという自分なりの基準があり、それをクリアして、チャレンジできると感じたタイミングだったように思う」と続けた。

男性が創るクールでミニマルな女性服ということもあり、「マニッシュ」「ソフィスティケイト」といった形容詞とともに語られることが多い『Ujoh』だが、「コンセプチュアルなものは特にない」と西崎氏は明言する。「こういうことをやりたい」という想いの形はあるにせよ、シーズンごとにテーマを決めることはない。ワンシーズン、ワンシーズン模索しながら、手を動かして創ることで個性を形にしてきた結果が現在の『Ujoh』なのだと。

東京コレクションへの参加も、先頃2016年春夏を終えて5回目を数えた。ショーは出力方法の1つとして活用していくという考えで、どのようにプラスに結びつけていくかを踏まえて意欲的に取り組む。「洋服で振り向かせたい」から、派手な演出は一切なし。創るもののレベルを上げていかなければ人が振り向かない方法で自身を追い込み勝負を貫く。「時間がかかるアプローチかもしれないが、自分たちにはそれが合っている。そして、それが自己成長のためのよきハードルとなり、好循環をもたらす」との信念のもと、少しずつ手応えを感じ始めているという。

よりよい服づくりのためには自分自身がレベルアップすること

モード学園時代の記憶を遡れば、授業、課題、アルバイトに追われ、ひたすらに忙しく過ごしたことが蘇る。ただ、そんな多忙な中でも、クラブでのファッションイベントを企画したり、他校のメンバーとコラボしたり、いわく「面白そうなことにはフラフラと寄っていくタイプ(笑)」で青春を謳歌していたとか。また、卒業後も親しい付き合いが続く、かけがえのない仲間を多く得た。

ブランドを立ち上げた同級生も何人かいて、互いに情報を交換し合うなど、今も良い関係だ。「モード時代の課題の特長とか、そういうものがどこかに残っているもので、発表された新作を見てニヤリとさせられることも。アイツ、昔からこういう服をつくってたなぁってね」。同級生たちの活躍に心地よい刺激を受けつつ、自身のブランドも確実な成長曲線を描き、国内はもとより、ロンドン、モスクワ、ニューヨーク、パリ、香港など海外への展開も加速中である。

今後は“本職”だったメンズの立ち上げも視野に入れており、『Ujoh』のステージはますます広がっていく。しかしながら、先に明確な目標を設定してそこに向けて進むというのは、西崎氏のスタイルではないのだとか。前シーズンを超えることが毎シーズンのミッションであり、そのために自身のレベルを引き上げていくことが肝心。「方法なんて、あるような、ないような…」と試行錯誤は続くが、「いい服を創り続けたい」という不変の情熱がある限り、進化していけるのだと確信している。

『Ujoh(ウジョー)』
西崎暢氏によるハイファッション・ブランド。パタンナー視点によるクリエイションは、本質的なテーラーリングや大胆なカッティングなど、布の理にかなったデザインを独創的なバランスで創り出す。

※卒業生会報誌「MOGA PRESS」70号(2015年11月発刊)掲載記事