〈校費留学レポート〉ハリウッド大作を支える世界的特殊メイク工房で学ぶ菊川さくら
菊川さくら
菊川さんは、世界で活躍する特殊メイクアーティストになるため、エンターテイメントが街中にあふれる世界最大の映画の街ハリウッドにある工房「SPECTRAL MOTION (スペクトラル・モーション)」において、第一線で活躍しているクリエイターから直接指導を受け、技術を磨くべく日々奮闘中です。
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菊川さくら2014年3月 グラフィック学科卒 |
校費留学レポート(2015.7)
ロサンゼルスの生活
ロサンゼルスでの生活が始まり、約1カ月が経ちました。
ロサンゼルスは車が必要不可欠のため、とても心配でした。ハンドルも車線も日本とは逆のため、最初は戸惑いましたが、今ではすっかり慣れ、日本にいるころより運転が好きになりました。
月曜~土曜日の朝から夜までスペクトラル・モーション社で彫刻や映画製作の手伝いをし、語学学校が始まってからは、午前中は語学学校、午後は工房で作業をしています。忙しいですが、とても充実した貴重な時間を過ごしています。
スペクトラル・モーション社は、アカデミー賞をはじめ4部門を受賞した『バードマン』のコスチュームを制作した工房で、トップクリエイターが多く在籍しています。その他、『パシフィックリム』『ヘルボーイ』『X-MEN』『ファンタスティックフォー』など大ヒット映画を数々手がける工房であり、その一角で実際のクリエイターの仕事を見ながら制作活動ができるという素晴らしい経験ができます。
クリーチャー制作の授業
授業初日は、彫刻用のクリーチャーのデザインを、写真を元にしてPhotoshopで制作しました。まったく異なった生き物を組み合わせたり、パーツの大きさを変えたりすることによって一から描くより早くて正確なディテールのデザインができ上がります。こういったデジタルを使った手法が今では一般的だと学びました。
次の授業ではNSPという彫刻用の粘土を使い、自分でデザインしたクリーチャーの制作が始まりました。つくりたいものの顔や身体の向きがどうなっているのか、筋肉や骨格、目や鼻などの各パーツの構造、流れ、奥行き、すべてが連動していることを常に意識してつくることが難しい。彫刻物を遠くから見ることで気がつく問題が多いのですが、なかなかそれができずに何度も講師から指摘を受けました。
学びを重ね、多くのものを見て、知り、自ら気づくことで徐々にできるようになっていくのを自分でも感じられるので、本当に難しいですが、その分とても面白く、楽しいです。
2体目の彫刻は、俳優を制作しています。似せるために必要なパーツの位置やバランスなどのまず考えてから始め、全体の形を意識することで、一体目よりもスムーズに作業が進んでいます。少しずつですが、確実に成長していっていると感じるので、これからも継続して頑張っていきます。
工房で働くすべてのクリエイターから技を吸収
この工房のクリエイターであり、私たちの講師である片桐裕司先生が初監督の映画『GEHENNA(ゲヘナ)』の劇中で、実際に使われる彫刻の形取りやシーム取りの手伝いもさせていただいています。一発勝負の作業もありすごく緊張しますが、映画がつくりあげられる光景に現場で触れる毎日は新鮮で刺激的です。工房で働くすべてのクリエイターから吸収できることが多くあり、本当に素晴らしい環境です。
また、先日『ジュラシックワールド』を観るため片桐講師にチャイニーズシアターへ連れて行っていただいた際には、劇場で片桐講師のご友人のクリエイターや、シンプソンズのトップイラストレーターの方々とお会いすることができました。渡米早々、多くの映画関係者や著名なクリエイターの方々と出会う機会があり、驚き、そして感激しています。
※校費留学レポートより