居心地のいいマイ・ワールドに
どっぷりつかり過ぎない方がいい
株式会社マーグラ
佐藤 麻奈(エディトリアルデザイナー)
モデルを経験し
雑誌づくりに興味を抱く
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(株)マーグラ
佐藤麻奈(エディトリアルデザイナー)http://mahgra.co.jp/ |
中学時代にティーン向けファッション誌のモデルの仕事をしていたことから、雑誌づくりに興味を持ち、デザイナー志望になったという佐藤麻奈氏。「カメラマン、デザイナー、ライター、エディター。その道のプロたちがノウハウを集結させて1冊の雑誌をつくり上げて行くプロセスを間近で見ていて、面白そうだな、やってみたいなと思った」そうだ。雑誌づくりに携わるといっても、モデルとデザイナーでは役割が180度違う。モデルは最前線でスポットライト浴びる華やかな職種。一方デザイナーは、いうなれば裏方。周囲からはさんざん驚かれたが、細かい手作業が好きでハマるとのめり込むタイプの自分には、デザイナーの方が合っていると思えた。
やりたかったのは大好きなファション誌のデザイン。だからこそ、ファッション系の学校として知名度があるモード学園を選んだ。当時のグラフィック学科は1クラスしかなく、結束力が半端なく強かった。「みんな個性的で、熱くて、濃い感じで……」。印象に残っているのは、ファッションデザイン学科、メイク学科と合同で行ったイベントだ。ファッションデザイン学科の学生がモデルを、メイク学科の学生がヘアメイクを担当し、佐藤氏たちグラフィック学科の学生はアートディレクターの立ち位置で誌面づくりを受け持った。撮影のディレクションに始まり、レイアウト、デザインまで、まさに自分がやりたかったことをトータルで体験でき、とても有意義だったと語る。
言われたことだけではなく
常にプラスαを

卒業後に現在の会社に入社し、5年目を迎えた佐藤氏。アシスタント時代を経て、かなり仕事を任せてもらえるようになった今、「前回のデザインがよかったから」と名指しで依頼が来ることも増えてきた。
「そういうのってやっぱり嬉しいし、モチベーションが上がる」。デザイン案を提案する際には、1案出せばよいところを2案3案とつくるなど、常にプラスαの仕事を心がける。雑誌のデザインは広告などと比べると比較的自由度が高い。たとえば編集担当からは『かわいい雰囲気で』と言われるだけで、あとはデザイナーのセンスにお任せといったようなことも多々ある。「そんな時こそ自分のセンスを磨くチャンス。様々な方向性を考えつつ、表現の可能性を探っていくプロセスが楽しい」。そして「求められたものをきっちりつくるのはプロとして当たり前。でも、それだけだとデザインの幅が広がらないし、仕上がりも面白くならないので」とも。
もちろん、デザイナーとしてはまだまだ駆け出しの部類。迷うことや壁にぶつかることはしょっちゅうだ。自分がよいと思うものとクライアントに求められているものが一致せず、葛藤することだってある。加えて、雑誌は発売日が決まっているため、必然的にスケジュールはタイトになってしまう。どうしても時間に追われがちになってしまうのだが、「時間がないことを言い訳にしない、妥協しない」ということを自身に課しているのだという。
自分なりの“はみ出し方”で
世界を広げてみては?
いくつもの月刊誌のレギュラーを抱え、徹夜や朝帰りもある。プライベートの時間がなかなか確保できないというが、それでも「今、仕事がどんどん楽しくなってきている」と充実した表情だ。たまの休日でさえ、ふと気がつけば仕事のことを考えているという。雑誌を読めばデザインが気になるし、街に出れば、道行く人々のファッションが気になる。「これは使えそうだとか、ああいう配色はお洒落だなとか、そんなことばっかり考えてしまう」。

そんな佐藤氏が気をつけているのは、思考や行動を固定しないようにすること。好きなファッション、好きな場所、好きな食べ物、好きな音楽……etc.好きなものに囲まれて生活するのは心地よいが、それに慣れてしまうと妙に落ち着いてしまって刺激がない。だから、居心地のよい自分のテリトリーからあえて出てみる。たとえば、いつもと違った道を通る、行くお店を変える、今まで着たことのないファッションにチャレンジするなど、ついついパターン化しがちな行動をほんの少し変えてみることが、意外な発見につながることもある。
「大きくはみ出さなくても、一歩、二歩で全然構わないと思う。デザインだって、正面から見るのと、少し斜めから見るのとでは別物になるように、いつもの位置から少しずらして見てみる。すると、自然とそれまでの景色とはまったく違って見えてくるから」。それが佐藤氏流の“はみ出し方”である。
※卒業生会報誌「MOGA PRESS」68号
(2013年11月発刊)掲載記事