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『男子力』
男、女である前に「人」である

FASHION

時代とともに、価値観も生き方も多様化しビジネスシーンにおける男女の役割も変化した今。

「男だから」「女だから」のその前に人間としてどうあるべきかを考えろ!

ファッション、インテリアのジャンルで鬼才を発揮する3人の卒業生たちが後輩たちに愛を込めて、辛口のエールを贈る。

男子力とは守ることか、
それとも攻めることか

―昨今メディアを賑わしている「女子力」に比べて「男子力」というのは、あまりフォーカスされない言葉ですが、皆さんは「男子力」というと、どのように思われますか?

高橋:男性ならではの力というと、包容力……かなぁ。自分にそれがあるかどうはわからないけれど、そうありたいという願望も含めて。

吾妻:僕は、どちらかというと守る力よりも、攻める力のイメージかな。破天荒なパワーに男性特有の魅力があるように思います。遊んで、ムチャをして、時には危ないこともやって……そういう“やんちゃ”な行動は男性ならではかなぁと。

須藤:勉強になります!(笑) 僕がまず思い浮かんだのは行動力。仕事でも遊びでもアグレッシブに、後先考えずに突っ走っていく、みたいな。もちろん女性でもそういうタイプの人はいるでしょうけれど、男性の方がその傾向が強くありませんか?

吾妻:そうそう。男は総じてロマンチスト。夢を追いたい生き物なんですよ。一方で、女性は現実を見る力に優れている。だから仕事もバリバリやってくれるんです。うちの会社は女性社員が圧倒的に多いんですけど、みんな本当に仕事熱心で感心させられますよ。だから僕は数少ない男性の立場を強く意識して、彼女たちのパワーをより活かしてあげられるようにする役回りを心がけています。女性が持ちにくい視点で「こっちの方がいいんじゃない?」「もっとこうしてみようよ」とアドバイスしたり、ちょっと現実から離れた提案をして、遊び心を刺激してあげたり。時には無茶振りもしますよ。

高橋:同性同士で無茶振りするとトラブルの種になりがちだけど、不思議なもので異性だと事が運ぶんですよね。それに遊びの提案は、男性の方が得意ですよね。いつまでも子どもの部分があるから。

吾妻:女性って色々なターニングポイントがあるじゃないですか。結婚だったり、出産だったり、あれこれ考えて、選択しなければならない節目がやってくる。場合によっては、何かを犠牲にしなきゃいけないことだってある。そういうプロセスがあるから自然に成熟していくと思うんです。でも男性は結婚しても、子どもができても、精神的に変化はあるだろうけど、基本的に変わらないですからね。そういうところが少年のように夢を見続けられる所以かな。

高橋:そうですね。とはいえ、昔と比べたら、男女の役割も明確な違いはなくなっていますよね。たとえば、結婚したら夫が妻を養うという価値観は、今はないに等しいでしょう。女性のほうが高収入のケースもたくさんあるし。

須藤:確かに男だから、女だからと区切るのは難しい。もちろん体力とかは明らかに男性の方が上でしょうけど、力仕事だってバンバンやりますし。建築の現場監督をする女性も今時は特に珍しくないですから。

高橋:そういう観点からすると、男の良さって何でしょうね。女性の良さならたくさんいえるんですけど(笑)。まずビジュアル的に美しいし、華やか。そして、今の女性たちはどの世代も勢いがある。

吾妻:男らしさ、女らしさも定義も変わりますね。第一線でバリバリ働く女性がいる一方で、気配り上手で人のサポートが得意な控えめな男性だっている。結局は、人間としてどう魅力的かということですよね。ビジネスの現場では特にそうだと思います。

仕事の土台になるのは
やはりコミュニケーション力

―では、皆さんが仕事をする中で、大事だと思う力は何でしょうか?

須藤:思いついたことや好奇心を形にする力ですね。思いつくことってたくさんあるんです。「これをやったら絶対おもしろい」とか「こうしたらビジネスが広がりそう」とか。でも、それを形にするとなると、当然様々な課題や障害が出てきます。アイディアが斬新であるほど実現するまでの道のりは険しい。それをひとつ一つクリアして、形にしていく力があれば強いなと。そのためには、洞察力、分析力、忍耐力、コミュニケーショ力など、様々な力が絡んでくるわけですが。

吾妻:僕は人間にとって大事なことは、幼稚園か小学校1年生ぐらいまでで教わることだけだと思っています。それが何かというと、「挨拶をする」「うそをつかない」「約束を守る」の3つ。これさえできていれば、人間としてOKですよ。デザインのテクニックとか商品の企画力とか、効率よくやるとか、そういう部分はチームで補えるでしょ?基本さえできていれば、コミュニケーションはとれるのだから。

高橋:でも、その3つのことがきちんとできていない人が意外に多いんですよね。

吾妻:そうなんです。コミュニケーションのうちでも、もっとも初歩的なことなのですけどね。それができないと、どんなに才能が豊かな人材でも結局のところ仕事にならない。

高橋:コミュニケーション力がないところに仕事は成立しませんからね。僕自身のことでいえば、期待に応える力です。僕の仕事は、物を売るわけではなく、いってみれば僕の技術や感性を売り物にしているわけです。「高橋に頼めばこういうものをつくってくれるだろう」と思ってオファーをくれる。だからその期待を絶対に裏切らないこと。それは常に肝に命じています。100%で応えるのは最低ライン。100%プラスαの部分が非常に大事です。

チャレンジ精神で
自分の道を切り拓け

―皆さんの経験を踏まえつつ、後輩へのアドバイスをお願いします。

吾妻:臆せず色々やってほしいなと思います。たとえばイベントのお手伝いとか、学校からふられる話がありますよね。そういうチャンスを上手に活用していけば確実にスキルアップにつながりますよ。机に座って勉強することも大事ですが、そうじゃないところで得るものも大事。そういう経験が社会に出てから活きてくることも多いです。

高橋:インターンシップもいいシステムですよね。可能なら、あえて進路として考えてない業種をのぞいて見るのもアリだと思う。就職してしまったらもうそんな機会はないわけで……そういうことができるのも学生時代の特権だから。

吾妻:そうそう。自分はファッションを仕事の主戦場にしているけど、異業種の人たちとのコラボレーションにも積極的に取り組んでいます。「こんなことできるんだ」とか「こんなところにお金がかかるんだ」とか、逐一新鮮な発見があっておもしろいです。

須藤:しっかり勉強して、遊びもやって、友達つくって……学生時代しかできないことを満喫してほしいです。課題等で忙しいといっても、やはり学生時代のほうが自由な時間はある。生かすも殺すも自分次第です。あと個人的には、事情があって卒業旅行に行けなかったので、今思うと行っておけば良かったなぁと。あんな風にみんなと一緒に旅行に行ける機会なんて二度とないですからね。

高橋:同級生とは卒業後も交流は続いてる?

須藤:同じ業界で仕事をしている友人たちとは頻繁に交流があります。職種が変わってしまった人とはどうしても連絡が途絶えがちになってしまいますが、ただ、最近はフェイスブックで付き合いが復活することも結構あって。やっぱり学生時代の仲間はいいものですね。

高橋:仲間は大事。多ければ多いほどいいですよ。今はさすがに交流の機会が減ったけれど、20代の頃は、たとえば誰かが結婚するっていったら、100人単位でワーッと集まりましたから。

吾妻:携帯もメールもない時代なのに、すごい勢いで連絡が回るんだよね。飲み会もしょっちゅうだった。

須藤:お二人は、在学中からのお仲間なんですか?

高橋:吾妻さんは僕の1年先輩。当時コム・デ・ギャルソンにいたのでものすごく忙しくて、いつも来るのが深夜で……(笑)。

吾妻:朝まで飲んで一睡もせずにそのまま会社へ行って……なんてことをよくやっていました。やっぱり若さですね。ワイワイ飲みながら仕事の情報交換もできたし、楽しかったですよ。

経営者目線の思考力、語学力、プレゼン力

―最後に、皆さんが魅力を感じるのはどんな力でしょうか?こんな力を持っている人なら一緒に仕事したい、こんな力を持っている人材を求むなど、ざっくばらんに教えてください。

高橋:それはもう、ちゃんとやる人!(笑)母校へ講義に行って「衣装のデザインをやりたい人はいますか?」って質問をすると、結構手が上がるんですよ。華やかとか、カッコいいイメージがあるんでしょうかね。でも、実際のところ続く人は少ないんです。これまでたくさんの人を雇い入れてきたけど、「思っていた世界と違う」と挫折する人が多い。

須藤:もったいないですよね。理想と現実のギャップなんてあって当たり前なのに。

高橋:簡単に辞めて、全く違う業界に行ってしまうんです。20年以上、色々な人を見てきて最近思うのは、「会社のためを思ってくれる人」がほしいなと。自分のことだけじゃなくて、「こうしたら会社がもっと良くなる」という視点で物事を考えられる人なら即採用ですよ。

吾妻:それ、結構ハードルが高くないですか?

高橋:まぁ、そうかも。自分だって雇われている側だったら、そんなふうに思えないかもしれないですしね。ただ、どうしてそう思うのかというと、衣装のデザインってとてもパーソナルなものだからビッグビジネスにはなり得ないんです。会社の規模も大きくならないので、最終的には独立してやっていくことになる。だからコスチュームデザイナーを目指すなら、最初からそういう視点を持つべきなんですよ。

吾妻:なるほど。

高橋:そういう人が来てくれたら、自分の持っている技術やビジネスのノウハウを惜しみなく伝授してあげたい。ひとり立ちできるようにサポートしてあげたいと思ってますよ。

吾妻:僕が最近思うのは語学力です。ビジネスはますますグローバル化しているので、語学力は強力な武器になる。コミュニケーションの幅がグッと広がりますから。まずは英語、あと、これからは中国語もニーズが高いですね。

須藤:僕はプレゼンテーション力。僕自身があまり話術に長けているタイプじゃないので、しゃべれる人に魅力を感じるんです。僕がどんどんアイディアを出して、形にしていくので、それをプレゼンテーションしてくれる人と一緒に仕事をしたいなと思いますね。

吾妻:最初にも出たけど、今の時代、男子、女子の境界線みたいなものはなくなって、その人がどんな強みを持っているか、どんな魅力を持っているかってことですよね。

須藤:これからはますますその傾向が強くなるでしょうね。

高橋:今の時代、性別だけで何かが有利に働くってゼロではないと思いますが、少ないと思います。でも、逆にいえば男女双方に門戸が広がっているわけですから、それを追い風にしてほしいですね。自分の中にたくさんの力を蓄えてください。○○力は多ければ多いほど強みですよ。

編集後記

軽妙なトークにのせて、有意義なお話をたくさん聞かせていただきました。男女の区別はあるにせよ、鍵になるのは「人間としての魅力」であり、個々のパワーにフォーカスする時代。クリエイティブな業界を生き抜くためには才能や感性も大事だが、それ以上に必要なのが基本的なコミュニケーション力。豊富なキャリアを積んだ先輩たちの言葉は、後輩たちにとって金言になったのではないでしょうか。

高橋正史
コスチュームデザイナー
1988年ファッションデザイン学科卒業。テキスタイルデザイナーとしてそのキャリアをスタートさせるが、「自分のつくったものを形にしたい」という想いからコスチュームデザイナーに転身。吉川晃司、渡辺美里、THE GAZETTEをはじめ、数々のトップアーティストのステージ衣装のデザインを担当するとともに、近年は映画や舞台、CMなどにも活躍のフィールドを広げている。2011年は、日中国交正常化40周年記念した舞台『ジンギスカン -わが剣 熱砂に染めよ- 』の衣装、21年ぶりに復活した吉川晃司と布袋寅泰による伝説のユニットCOMPLEXがおこなった東日本大震災復興支援チャリティーライブ『日本一心』のコスチューム全般を手がけた。

【高橋正史さんから一言】
会社の視点で物事を考えられる人がいたら、即採用。

須藤将彦
インテリアデザイナー
1997年インテリア学科卒業。高校時代にイギリスへ留学した際、ヨーロッパの建築物の格好よさに喚起されインテリアデザイナーを志す。卒業後、小林敏哉氏に師事して店舗設計を学び、2003年に独立。株式会社dig.designworksを設立する。自身がオーナーを務める隠れ屋的カフェ「deborah.」(東京・三軒茶屋)をはじめ、これまでに設計デザインを手掛けた店舗は200店舗以上、ジャンルは飲食店舗を中心に住宅、物販、ライブハウス、クラブ、サロン等多岐に渡る。2012年6月、東京・六本木のメルセデス・ベンツ コネクションにて開催された写真展『グレニッチヴィレッジから日出づる国へのリッキー・パウエル回顧展』の空間演出を担当する。

【須藤将彦さんから一言】
勉強して、遊んで、たくさん友達をつくって…学生時代しかできないことを満喫してほしい。

吾妻実
プランニング・ディレクター兼ショップオーナー
1986年ファッションデザイン学科卒業。コム・デ・ギャルソン、アルファスピンを経て独立。レディースブランド「deep sweet easy」を立ち上げ、2002年、東京・代官山にFLAGSHOPをオープン。クリエイティブディレクターにモデルの冨永愛を起用し話題をさらう。「モード&フェミニン」のブランドコンセプトのもと、女性の根底にある愛らしさを引き出す独自のスタイル提案が幅広い世代から支持され人気ブランドへと成長。2011年2月「deep swee easy」のアイテムを含むセレクト型複合SHOPとして「DSE」の展開をスタート。百貨店やファッションビルに続々と直営店をオープンさせる。2012年秋、上海に初出店。アジア進出を皮切りにさらなる展開拡大を目指す。

【吾妻実さんから一言】
「挨拶をする」「うそをつかない」「約束を守る」この3つさえできれば、あとは何とでもなる。

※卒業生会報誌「MOGA PRESS」67号(2012年6月発刊)掲載記事