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『女子力』
「人として輝くこと」が魅力の源

FASHION

女性らしい細やかな気配りも欠かさない一方で、強さ、厳しさ、たくましさも忘れない。 それが、働く女の底力。ファッションデザイナーとして、ヘアメイクアーティストとしてそれぞれ第一線で活躍中の3人の卒業生たちがモード時代の思い出をふまえながら、魅力的な人間像について語り合った。

「女子力」という言葉は奥が深い

― 近頃雑誌などで盛んにいわれている「女子力」という言葉について、皆さんはどのように思われますか?

HITOMI:一般的にはファッションやメイクなどに対してのモチベーションやレベルを指す言葉かもしれませんが、でも、女子力が何かって、人それぞれ違うと思うんですよ。「女子力を上げる」って、つまりは自分の理想の女性に近づくために頑張ることですよね。ある人にとってそれは、おしゃれのセンスを磨くことかもしれないし、ある人にとっては、仕事をバリバリやることかもしれない。結構深い言葉だと思いますね。

川島:単に「振る舞いを女性らしく……」っていう話だと、ちょっと抵抗があるけれど、「女子力を磨く」っていうのは、前向きで私は好きです。外見であれ、内面であれ、自発的に自分を磨こうというのは積極的でいいじゃないですか。

加藤:私の中では、やさしさとか思いやりとか、そういう内面的な要素が大きいような気がします。鍛錬して向上させるというより、自分の中で育むもののように思います。

女性ならではの“気配り”が
「女子力」である

― 皆さんが、女子力を発揮していると思うのはどんなときでしょう?

川島:えー、どうでしょう。細やかな気づかいは男性よりもできているような…。でも、仕事に集中していると、男だから、女だからという発想は全くなくなってしまいますね。もちろん、服づくりという点では、女性の視点は大いに活かされていると思います。やはり自分自身が身につけるものということで、男性デザイナーにはないリアリティが出せますから。

HITOMI:一般的な女子力っていう意味でいえば、全然ないですよ、私。「女子力?何それ?」って感じ(笑)。特に仕事のときは自分のやるべきことをひたすら頑張ってやるだけです。ただ、担当するモデルさんやタレントさんのテンションをいかに上げるかという部分にはものすごく気を使いますね。気持ち一つで顔が全然違ってきちゃいますから、いい顔でいてもらうための気配りは忘れないようにしています。それが、女性らしい部分といえばそうかな。

川島:男性のヘアメイクさんだと、そういう面はあまり気にしない人が多いんですか?

HITOMI:男性でも気配りのできる方はいますが、男性は、冗談を言ったりして場を和ませるといった全体的な雰囲気づくりをされる方が多い気がします。その人に対してこまごまとお世話したり、癒しを与えてリラックスさせてあげるような接し方は、女性の方が得意のように思いますね。

加藤:なるほど。私は、学生時代からずっと女性が多い環境で過ごすことが多くて……。高校も女子が多かったし、モード学園は夜間コースに在籍していて、昼間は百貨店のショップで販売の仕事をしていましたし。

HITOMI:百貨店は女性が多い職場ですものね。

加藤:そうなんです。その後、卒業してブランドを立ち上げて、2年前に独立するまでずっと在籍していましたけど、社員は大半が女性。で、どうだったかというと、すごく居心地がいいんですね。

川島:女子が集まると“陰湿”とか“ドロドロ”とかってイメージがありますが、案外そうでもないですよね。

加藤:そうそう。純粋で一生懸命。何をやるにしても、「それ、いいね。楽しそう」と意見がまとまったら物事がどんどん進むんです。

HITOMI:女性しかいないと、力仕事だろうが何だろうが、できる人がやることになりますよね。

加藤:だから話が早いというか……。同性同士だと、はっきり意見もいい合えますし、うまく回ればものすごくパワーが出ます。ただ、女性ばっかりだと柔らかさがなくなる。誰も掃除をしないとか。(笑)

川島:男性の視線がないと、そういう面はあるかもしれませんね。うちの会社も圧倒的に女性が多いのですが、たとえば、女性ばっかりでミーティングしていて全然話がまとまらないときに、男性が一人入ると、スッとまとまることがある。

HITOMI:ありますねー。

川島:そこはもう女性にはフォローできない領域(笑)。私自身は、女子力という風に意識しているわけではないけれど、もっともっと気配り、目配りをしていかなきゃと思いつつ、まだまだです。自分もクリエイターとしての仕事もあるので、そっちに集中していると、人のことに気が回らなくなって……日々反省ですね。

加藤:余裕を持つことって大事ですよね。余裕がないとキリキリするし、疲れがたまって体調だって悪くなる。周囲への思いやりは当然だけど、自分のことも思いやってあげないと持ちません。年齢を重ねて、だんだんその思いが強くなってきました。

グループで学ぶことで
得たものは大きかった

―皆さんの、モード学園時代のことをお聞かせください。学んでいく上で、どんな力を得ましたか?

川島:グループ行動が多かったので、自ずとコミュニケーション力が養われましたね。それが、今の仕事にすごく役に立っていると思います。考え方も技量もまちまちの人たちがコミュニケーションを取りながら一つの目標に向かって進んでいく。モード学園時代に学んだそれって、実際の仕事そのものじゃないですか。

加藤:本当にそう。フォローしたり、されたりしながら、みんなで一つのことを進めていく。そして、結果に対して全員で責任を持つ。しんどいことも多々ありましたが、良い体験ができたと思います。

HITOMI:一人で勝手にやれたほうがラクだけど、そうはいきませんからね。あと、ずばり体力。メイク学科の学生って、メイク道具を入れたキャリーバッグを持って毎日学校に来るんです。それを持って階段を上がったり下りたりするわけです。これが結構きつくて…(笑)。でも、実際社会に出たら体力がなくちゃ始まらないので、今思えばいい鍛錬でしたね。

加藤:確かに、どんな仕事をするにしても体力は大事。弱い人から落ちていくような……。

川島:そして、課題の量が多かったのと、提出が厳しかったのと……。

加藤:それはどこの学科も同じですよね。私の場合、昼間は働いていたのでとにかく時間がなくて。お昼休みは、食事は5分で済ませて残りは課題をやるというのがお決まりでした。社員食堂の隅っこでコツコツと。それでも間に合わないときは、店長の許可を得てフィッティングルームでやらせてもらったりとか。

川島:提出日は決まっているわけで、絶対的に時間が足りない。じゃあどうしたら間に合うか、どう時間をつくるか、考えますものね。

加藤:「できない」はナシですから。そうやって、あれこれやってきたことは今すごく糧になっています。

HITOMI:メイク学科の課題は、学生同士でモデルになりっこしながら進めることが多いので、協力し合わないとできない。正直、面倒くさいなと思うこともあったのですが(笑)。でもそれもいい経験でしたね。懐かしいです。

川島:自画自賛するわけじゃないけど、モード学園の厳しい課程をクリアして卒業できた人は、それだけですごいアドバンテージを得たと思いますよ。

ビジネスの必須事項は
どの業界でも同じ

―皆さんの経験を踏まえつつ、後輩たちへアドバイスをお願いします。

加藤:「できない」とか「ムリ」という言葉は捨てましょう。「できない」と思ったら前に進まないので、「どうしたらできるか」を考えるくせをつけてほしいです。そして、何か一つやりかけたら、それがどんな些細なことであっても最後までやり遂げること。それを繰り返しているうちに、必ず力がついてきます。

HITOMI:誰かがやってくれるから…じゃなくて、自分でどうにかするよう に考えていってほしいですね。たとえば、撮影なんて何が起こるかわからないわけですから、私は、ありとあらゆるものを想定して準備をするようにしています。「○○がないからできない」っていうのは、プロとしてあり得ないと思うので。考えてみると、それはいつもフルセットの道具を持って通っていたモード時代のおかげだと思いますね。あと、だらしないのはダメ。時間を守る、約束を守るは最低限のエチケットだと思います。

加藤:ヘアメイクさんが来なかったら撮影は始まらないし、予定もどんどん遅れていきますものね。

HITOMI:学生のうちはピンとこないかもしれないけど、遅刻って、仕事がなくなるほど重大な失態ですよね。事情があるにせよ、そういうことをしちゃう人って、やっぱり信頼されなくなってしまいますよね。

川島:コミュニケーション力に含まれることですが、伝達力もとても大事ですね。仕事はたくさんの人が関わって進んでいくものなので、情報が伝達できていなければどこかでミスが出てしまいます。

加藤:要するに相手に対する思いやりですよね。「わかっていると思った」「やってくれると思った」「伝わっていると思った」そういう勝手な思い込みが危険なんです。

HITOMI:どの業界にも、どんな仕事にも当てはまることですね。センスやテクニックが優れていても、そういう基本的なことができないと行きづまると思います。

川島:プラス、責任感も意識してほしいな。任された仕事は責任を持ってやってほしい。これは会社で社員たちに対してしょっちゅういっていることでもあります。

想像力と忍耐力は
仕事をする上で不可欠

―最後に、皆さんにとって大事な○○力って何でしょうか?自分が大切にしている力、自分が魅力を感じる力、こんな力を持っている人なら一緒に仕事したいなど、教えてください。

川島:私が日々大事だなと感じているのは、想像力です。仕事に限らず、人と付き合っていく上で、一番大事なことではないでしょうか。どう思うか、何を望んでいるか。相手のことを思いやって行動することがコミュニケーションの基本だと思うんです。また、次に何があるだろうと想定して動ける人になれば、人間関係も広がっていく。それから忍耐力。生きていくって忍耐そのものじゃないですか。あれ? シビア過ぎるかな、私。

HITOMI:いえいえ、同感ですよ。特に仕事は忍耐だなと思いますもの。好きな仕事だけど、決して楽しいだけじゃない。一見華やかそうに見えて、とても厳しい世界です。

加藤:耐えるって大事ですよね。私、独立してからすごく孤独を感じるようになったんです。以前はそんなこと全くなかったのに。誰にも相談できないことがあったりして…耐える力がないと越えられないなとひしひし感じているところです。

川島:わかります。社長業って孤独なんですよ。強い気持ちがないとやっていけないですよね。

HITOMI:私はフリーランスなのでお二人と立場は違いますが、強い気持ちを持つということには大いに共感します。あとは、さっきもいったように、体力と、決めたこと、約束したことを守れる、自己管理力も必須事項ですね。

川島:心身ともに、すぐにへばるようではいい仕事はできないですものね。それから、若い人たちに培ってほしいなと思うのは、継続力。ファッションが好きで、頑張って勉強してきて、せっかく仕事に就いても辞めていく人は多いです。仕方ない理由もあるけど、でも、簡単にあきらめないでほしい。

加藤:私、モードに入学したとき、クラスメートを見て衝撃を受けたんです。絵がうまい人、デザインセンスのいい人、縫うのが上手な人……そういう人たちがたくさんいて「この人たちと競ってもかなわないな」と悟りました。コンテストで賞を取ったりするのはムリだろうと。

川島:でも、あきらめませんでしたよね?

加藤:はい。その代わり何か一つ自分ができることを頑張って続けてみようと思って皆勤賞を目標にしたんです。皆勤すると卒業式で学長と握手ができると聞いて、「じゃあそれを目指そうと」。毎日行くことなら私にもできると思ったわけです。で、無事に目標達成できました。

HITOMI:それはすごい!

加藤:大変でしたが、やればできる!と思えて、ものすごく自信がつきました。それが私の原点ですね。こんな例もあるということです。

HITOMI:「継続は力なり」は真実ですよね。決して楽しいことばかりじゃないし、迷ったり、失敗したり、挫折したりすることもあるでしょうけれど、それでも頑張って続けていくと必ず成長できる。

川島:若い人たちにすごく期待しています。就職難といわれていますが、でも実は、人材は不足しているんです。チャンスはあちこちに転がってますよ。

HITOMI:チャンスは自分からつかみにいかなきゃダメですよね。でも、意外に待っている人が多かったりしません? プライドなのかな?

加藤:自分からいかないとね。お高くとまっている場合じゃない(笑)。

川島:貪欲さは若さの特権ですからね。学生のうちにわからないことはどんどん聞いて、学んで、吸収して、しっかり地力を蓄えて社会へ出てきてほしいです。

編集後記

お話を伺いながら、学生時代は勉強に、卒業してからは仕事に対して、真摯に向き合って歩んできた様子が伝わってきました。3人ともそれぞれしっかりとした意志を持ち、自分を客観的に見ていて、常に向上心を抱き続け、反省も忘れない。第一線で活躍を続けられる理由がそこにあるような気がします。そんな先輩たちから後輩たちへの言葉は、厳しいけれども、愛情にあふれていました。

加藤訓仁子
ファッションデザイナー
1994年ファッションデザイン学科卒業。 在学中よりインディーズブランド「メタモルフォーゼ」を立ち上げ、卒業後は(株)メタモルフォーゼのデザイナーとして、ロリータファッションに関するあらゆるアイテムの企画、デザインを手がけ、全国の直営ショップやオンラインにて展開。 国内のみならず海外においても多くのファンを獲得する。2010年に独立し、デザインオフィス「俵屋KATO」を設立。 ロリータファッションブランド「フィジカルドロップ」、NEO50’sブランド「Love Dice56」を立ち上げ、新たに始動。 2011年、東京・自由が丘に「フィジカルドロップ1号店」を出店。 活動の拠点である京都と東京を往来する多忙な日々を送る。

【加藤訓仁子さんから一言】
「できない」「ムリ」この2つの言葉は捨てて「どうしたらできるか」から思考をスタートさせる

川島幸美
ファッションデザイナー
1996年ファッションデザイン学科卒業。 大手アパレル会社のパタンナー、デザイナー、セレクトショップのプロデューサーを経て、2002年株式会社マーキュリーデザインにて「AULA AILA」デザイナーとしてデビュー。2005年 (株)CODE.9を設立。 2008年にはディフュージョンブランド「RYZA」を、2011年には「AULA AILA」 のコレクションライン「AULA」をスタートさせる。 フェミニン、エレガント、ロックなどの様々なテイストをミックスさせたエッジィなデザインは世界中のファッショニスタたちの注目の的。 ワールドワイドな展開が加速するとともに、安室奈美恵、冨永愛をはじめ多くのアーティストの衣装などを手がけるなど、そのクリエイションは多岐に渡る。

【川島幸美さんから一言】
心も体も鍛えられ仕事にダイレクトに活きることが学べたモード時代

HITOMI
ヘアメイクアーティスト
2008年メイク学科卒業。 趣味のダンスがきっかけでヘアメイクやファッションへの興味の幅を広げ、モード学園に進学。 卒業後、DOUBLEやAIなど、多くのジャパニーズシンガーのヘアメイクを手がけるトップヘアメイクアーティスト、小野明美氏に師事。 同時にフリーランスのヘアメイクアーティストとしての活動をスタートさせる。 ファッション関係のほか、ブラックミュージックやダンスといった音楽関係の仕事も多く、ライブ、プロモーションビデオ、ジャケット制作などで様々なアーティスト、タレントのヘアメイクを手がけるなど多彩な分野で活躍中。 2012年のモード学園(東京・大阪・名古屋)CMのヘアメイクを担当した。

【HITOMIさんから一言】
相手のことを思いやる、先のことを想定して考える。想像力はコミュニケーションの基本

※卒業生会報誌「MOGA PRESS」67号(2012年6月発刊)掲載記事