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ショーでしかできないこと、
ショーだからできることがある

FASHION

時間や空間など、さまざまな制約のある中で表現を追求する快感

どこまで広げられるか、常に挑戦する気持ちで

ブランド設立3年目で東コレデビュー

FACTOTUMとは、ラテン語で「勝手に生きろ」の意味であり、有働幸司氏の好きな作家、チャールズ・ブコウスキーの小説のタイトルに由来しているという。「コンセプチュアルな服づくりで、ひとつの文化としてファッションを発信していきたい」という長年の想いを実現する形で2004年にブランドを設立。ミリタリーやワークをベースにした洗練されたリアルクローズを展開し、日本のメンズシーンをリードするブランドへと成長を遂げている。

東京コレクションデビューは2007年春夏。それまではシーズンごとにビジュアルブックを制作するなどしてブランドイメージを構築していたが、ランウェイ形式のショーという限定されたフォーマットの中での表現という未知の分野に魅力を感じて、"自然の流れ"で進出を決めた。「わずか10分程の時間で伝えられることには限りがある。でも、だからこそできること、そこでしかできないことがあり、その可能性を追求していくのが面白い」と有働氏は語る。ショーは通り過ぎていくもので、瞬間、瞬間の連続。そのうえ演出上の制約も多い。与えられた条件の中で何ができるか。モデルのパフォーマンス、音楽や照明などをミックスさせ、どんな世界を創造できるか。これまでに計4回のコレクションを経験し、回を重ねるごとに引き出しは増えているが、まだまだ模索している部分は多い。果てしなくも楽しい挑戦は続いている。

テーマは小説、音楽、絵画などから

ファッションをトータルな文化として捉える有働氏の独特の感性は、コレクションのテーマ設定にも表れている。これまでに選んだテーマは、ソローの『森の生活』やサリンジャーの『ライ麦畑でつかまえて』、シャガールなど。ファッションとカルチャーが融合した美しいコレクションが毎回話題を集めてきた。「テーマを決める際、いちばん初めのきっかけになるのは、小説や音楽、絵画、映画など。そして、ジャンルを問わず琴線にふれる作品に出会うと、必ず舞台となった場所を訪れ、その世界を肌で感じてみる」という。そうすることで、"今自分が伝えたいメッセージ"が明確になり、服作りのイメージが広がる。湧き出るアイディアはFACTOTUM=有働氏のフィルターを通して、リアルクローズに落とし込まれていくのだ。

2008年秋冬のテーマは「VON(希望)」。アイスランドのロックバンド、シガー・ロスのアルバムからインスパイアされたという幻想的なコレクションを披露した。もちろん今回のコレクションの制作にあたっては、アイスランドを訪れている。

毎日が刺激的だった学生時代

モード学園時代については、「さまざまな感性や個性を持った人間が集まっていて、毎日が刺激的で楽しかった」と振り返る有働氏。当然ながら同級生はファッションにこだわりを持つ連中ばかり。ストリート、パンク、モード、トラッドなど皆それぞれに志向があり、自分が詳しくないジャンルについて学ぶいい機会になった。また、教師と生徒との距離が近く、本音の付き合いができたこともとてもプラスになったという。

自身の経験を踏まえて後輩たちに伝えたいのは、「食わず嫌いにならずに、できるだけいろんなものに触れてみる」ということ。一見好みでないようなものであっても、とりあえず触れてみることが大切。なぜなら、否定してしまうと前に進むことはできないから。「そんな中で、自分が本当に好きなものや、やりたいことを見つければいい。そしてこれだ!というものを見つけたら、苦しい時があっても諦めないで、夢を追い続けてほしい」。有働氏からの力強いエールである。

有働幸司

1993年、ファッションビジネス学科卒業。BEAMSを経て、1998年にラウンジリザードの設立に参加。2004年に独立し、FACTOTUMを設立。2007年東京コレクションデビュー。現在の日本のメンズシーンになくてはならない存在に。

※卒業生会報誌「MOGA PRESS」61号(2008年6月発刊)掲載記事