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「東コレ」から世界へ!
「2019年度 Tokyo 新人デザイナーファッション大賞」プロ部門に選出された気鋭の若手デザイナー

FASHION

関根隆文
meagratia
ファッションデザイナー

特集:上昇気流に、なる!
~行動力(energy)で上昇~

「欲しい」「使いたい」と思えるものをつくりたい

「やりたいことに対して一直線。思い立ったら、自分からどんどん動く。そして何より、究極の負けず嫌い」。
メンズブランド『meagratia(メアグラーティア)』の始動から8年余り。気鋭のファッションデザイナーとして多方面から注目を集める関根隆文氏は、飄々とした雰囲気を漂わせながら、自分自身についてそんな風に語った。

モード学園時代も、アグレッシブな気質は如何なく発揮されていた。
「“何かを創る人”に憧れ、ファッションデザイナーを志して入学したが、当初は全く絵が描けず途方に暮れた」そうである。
けれども、持ち前の“負けず嫌い精神”で猛特訓を重ね、卒業する頃には、東京、大阪、名古屋の3校合同で競うデザイン画コンテストで、トップ50に選ばれるまでに成長を遂げた。また、2年次のFDC(ファースト・デザイン・コンテスト)では、仕上げのアイロンプリントで生地を溶かしてしまうというミスを犯すものの、不眠不休で一からつくり直して銀賞に輝く。「やってしまった瞬間は絶望したが、秒速で気持ちを切り替えて頑張った。とても印象に残っている思い出」と懐かしそうに振り返る。

そんな関根氏が後輩たちに伝えたいのは、「軸さえブレなければ夢はかなう。技術的なことなどは、努力で克服できるので大した問題ではない」ということ。自身も「ファッションデザイナーになり、自分のブランドを興す」という軸がブレたことは一瞬たりともなく、地道に歩みを進めてきた。
卒業後はコレクションブランドで研鑽を重ね、2011年に『meagratia』を設立。「東日本大震災が起きた直後で、事業を始めるには良いタイミングといえなかったかもしれない。けれども、世の中を元気づけるムーブメントを起こせたらという想いもあり、一歩を踏み出した」。

ヨーロッパの古着や長い服飾の歴史をベースに、ブランドコンセプトでもある“花”の様々な表情を表現。関根氏ならではのセンスが発揮されたアイテムの数々は、今、多くの人々を魅了している。

「東京コレクション」デビューで話題をさらい、追い風が吹く

『meagratia』は、ヨーロッパの古着や服飾の歴史を土台にした独特の世界観が特長。「古着が醸し出す温もりや柔らかさ、クラフト感、ギミックのあるディテールなど、自分の好きなエッセンスを凝縮して、ジャンルレスなウェアを提案している」。
インスパイアされるものはその時々で異なるが、ブランドを象徴する普遍的なテーマは“花”だ。
「花の持つ不完全な美しさを表現することはブランドコンセプトであり、シーズンごとにオリジナルの花柄を発表するなど、時間の流れとともに変化し、違った表情を見せる花の魅力を様々な形でクリエイションへ落とし込んでいる」。

2019年春夏シーズンで「東京コレクション」デビュー。関根氏が思い描く世界観が余すところなく表現され、『meagratia』が大きく飛躍するきっかけとなった。

2019年春夏シーズンには、長年の夢であった「東京コレクション」デビューを果たした。アシスタント時代にパリやミラノで有名ブランドのショーを見たときから、「服やモデル、音楽、照明などをミックスさせた表現の贅沢さ、圧倒的なスケール感に魅せられ、いつかは自分も!と思っていた」のだそう。

「東コレ」への出展は、ブランドが大きく飛躍するきっかけをもたらした。
「認知度が上がり、一気にオファーが増えた。また、経済産業省が主催する若手デザイナー支援プロジェクトに参加させてもらえるなど、社会的なつながりが広がっている」。さらには、「2019年度 Tokyo新人デザイナーファッション大賞」プロ部門入賞。著名アーティスト、俳優、女優の衣装も手がけるなど、「ノリにノッている、今」なのである。

現在地については、「流れに乗っているというより、流れをつくっている感覚。好きにやりながらムーブメントを起こしていくのが、自分のスタイルだから」と語り、「それができているのは、サポートしてくれる人たちがいるおかげ。感謝は尽きない」と続ける。
ちなみに、『meagratia』のグラーティアはラテン語で感謝の意味であり、「恩恵を受けてきた過去から、人に希望を与える未来を紡ぐ」という想いが込められている。

世界を目指さない理由は何ひとつない

ファッション業界のサイクルは慌ただしく、コレクションを発表したら、息つく暇もなく次のシーズンの創作に取りかかるのが常。半年から1年先を見据えつつ、実制作と次作の準備が同時進行する期間も少なくはない。
そんな目まぐるしさの中でも関根氏は「アイディアが溢れ、やりたいことが次々に湧き出てくる」といい、今後の活動について様々な展開を計画中である。

大きな目標として掲げるのは、海外進出だ。既にニューヨークやパリで展示会を開催して手ごたえを得ており、販路拡大に向け本格的にアプローチを進めていく。
「日本の何倍もの人がいる世界というマーケットを、目指さない理由は何ひとつない。逆に、世界で売らない理由があるなら教えてほしいぐらいだ」。加えて「もとはといえば、洋服は異国の文化。だからこそ、世界を舞台に勝負して認められたい気持ちが強い。たとえば、本気で海外で着物をつくる外国人がいたとして、その作品が日本で認められたら、かなりセンセーショナルでしょう? 目指しているのは、そういうところ」と熱い胸の内を吐露した。

「まずは、パリのファッション・ウィークに何らかの形で参加し、メディアに向けて作品を発表すること、そして、将来的には本拠地を海外に移し、グローバル展開に軸足を置く戦略を思い描いている」。

軸をブラさずボーダーレスに挑む関根氏の、『meagratia』の次の進化は、どんな形で現れるのか。注目せずにはいられない。

※卒業生会報誌「MOGA PRESS」74号(2019年12月発刊)掲載記事

Profile

関根隆文
meagratia
ファッションデザイナー

在学中よりインターンを経験し、下積み時代を経てコレクションブランドに入社。4年間アシスタントを務めた後に独立し、2011年に 『meagratia』を立ち上げる。2019年春夏シーズン、「東京コレクション」に初参加。ブランド事業に加え、数々のアーティスト衣装を手がけるなど、多岐にわたって活躍中。「2019年度 Tokyo新人デザイナーファッション大賞」プロ部門入賞。