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25歳で独立した店舗デザインのエキスパート
withコロナの店づくりとは

INTERIOR

林 祐介
林建築デザイン室
店舗デザイナー

良い店をつくる、それは何百もの糸を一本に束ねるようなもの

カフェや居酒屋などの飲食店を中心に人気店のデザイン、設計を数多く手がけ活躍中の林祐介氏。25歳で個人事務所を立ち上げ、デザインセンスと豊富な知識、加えて、施工会社や工務店での現場経験を持つことを強みに着々と実績を積み重ねてきた。

店舗デザインの仕事を端的に説明するならば、内装のデザインや装飾、空間設計をトータル的に担当し、クライアントの要望を具現化する、といったところだろうか。しかし、曰く「その範疇に収まらない仕事が山ほどある」のが実情だ。「業態から提案する場合もあれば、店名やロゴを考えてほしいという依頼もある。ほかにも、ユニフォームを決めたり、メニューのアドバイスをしたり…店舗デザインの最終目標は多くのお客様に来てもらい利益を出すことにあるので、運営に関するコンサル的な役割も担っています」。

店舗デザインにおいて、林氏が最も重視しているのは「人の心理」だそう。「お客様がお店に入ったときにどう感じてもらいたいか。思考を巡らせ、壁や床、家具、照明など、店内の配されるあらゆるものの素材、色、形状、サイズを導き出していきます。ものすごく考えますよ。相当マニアックです」と笑った。

そして「よい店をつくるというのは、何百もの細い糸を一本に束ねていくようなもの」と、独特の言い回しで仕事の核心を表現する。「違和感のある糸が混ざっていたら全体の雰囲気が壊れてしまう。一本のきれいな糸にするためには、クライアントの要望に応えるだけではなく、普通に人は気づかないような細かいところまで突き詰めていかなければ」。

おしゃれなカフェやカジュアルな居酒屋、和風レストランなど、さまざまなテイストの飲食店をデザイン

どんな状況でも人々に必要とされる店づくりを

林氏が主戦場とする飲食業界は、コロナ禍で大きな打撃を受けた業界のひとつだ。そのあたりの肌感覚について尋ねると、「東日本大震災のときと似ている気がする」との答え。「ただ、あのときは人のつながりを求める風潮が高まり、小さめのバルなど距離が近いタイプの店が増えていきましたが、今回は密の回避が必須。ニーズは変わっていくでしょうね」。

コロナ禍による変化を見据えながら思うのは、「コロナ対策は必要だが、画一的な店づくりはしたくない」ということ。「たとえば、パーソナルエリアの距離感は、店全体の雰囲気を決定する重要な要素。テーブルの幅ひとつにしても、たった数センチの差で会話しやすくなることもあればその逆にもなる。密を避けようと距離をとったせいで居心地の悪い空間になっては意味がない」と力説する。そして、「Withコロナにおける店づくりの課題にしっかり向き合い、アイディアを駆使して魅力ある店をつくっていきたい。どんな状況でも、たくさんの人々に愛され、必要とされる店づくりをする、そこはブレないようにしたいです」と熱い口調で続けた。

現在は飲食店のデザイン・設計をメインで請け負っている林氏だが、「いつの日か、図書館や美術館など公共性の高い施設を手がけてみたい」という夢がある。「小さな子どもからお年寄りまで、色々な年代の人々が集い、賑わう場所づくりに関われたら、そして、その場所が時代を超えて残っていったなら、デザイナー冥利に尽きると思うのです」

※卒業生会報誌「MOGA PRESS」75号(2021年1月発刊)掲載記事

Profile

林 祐介
林建築デザイン室
店舗デザイナー

卒業後 施工会社、工務店で、現場監督業務に従事。その後、モード学園講師・水野桂介氏が主宰するTKデザインに参加し、店舗デザイナーとしてキャリアをスタートさせる。2002年に独立し、林建築デザイン室を設立。飲食店を中心に、国内外で数多くの店舗設計、デザインを手がけている。