NYでの満たされた日々をつくった自分の居場所との出会い
- 小林 征司 デザイナー
- 2004年インテリア学科卒業
クライアントの想像よりも、一歩先をいく提案を
現在、小林征司氏が在住するのはNY。当時の講師、関口氏の同席のもと、Zoomを繋いでインタビューを行った。デザインオフィスbluarchに所属し、デザイナーとして、インテリアだけでなく、建築、ライティングデザインなど幅広く活躍している。もともとはどんなきっかけでデザインに傾倒していったのだろうか。「実家が木工所をやっていたからか、自然と家具やプロダクトデザインに興味を持つようになりました。学校に通っているうちに、そこに特化するよりも空間として捉えたほうが面白いんじゃないかなと思うようになって」。
在学時は、夜中に先生に電話をしてファミレスまで来てもらい、深夜まで図面を書いたこともある。当時の仲間と過ごした時間はかけがえのない思い出だ。「学生時代は一緒に頑張ってくれる友達がたくさんいたので、切磋琢磨している感じで楽しかったですね。モード・フェスティバル(現・未来創造展)で、僕たちのグループは家具をつくったのですが、実家の工場でいろいろ手伝ってもらいながらつくったことを覚えています。あの当時は、毎日のようにみんなで誰かの家に入り浸って制作していましたね。僕はハイバックチェアをつくりました」。結果、見事金賞を受賞。グループ全員でグアムに行ったのもいい思い出だ。当時を思い出して、関口氏と懐かしい思い出話に花を咲かせる。
卒業後は、校費留学制度を使って単身NYへ。以降、ずっとNYで暮らし続けている。そろそろ、人生の約半分は海外に身を置いていることになる。「有名な建築家や家具のデザイナーをずっと見てきたので、やっぱり生で見たり空気感を感じられたりしたら面白いだろうなあと興味は持っていました。その後、校費留学制度を知って、ぐっと海外との距離が近づいた感じですね」。
大学の教授がインターンを勧めてくれたことが、今の会社に入るきっかけだ。そのまま正社員として採用され、その仕事の充実感から、転職することなく今でも働き続けている。「日本でしっかり働いたことがないので違いはわからないのですが、やっぱりこっちは好き嫌いもはっきりしているし、特にNYはいろいろな国から人々がやってきていて、それぞれ異なるバックグラウンドを抱えているので、リクエストも多種多様で面白いんです」。住宅、店舗、オフィス……と案件は様々。どれも異なる魅力があるので、飽きることがない。今、進行中の案件はクルーズシップの外装と内装だ。街がそのまま動いているような、いわゆる豪華客船で、数々の案件を手掛けてきたものの、これは初めての経験だったそう。「船は本当に知らない世界だったので、新しい発見がたくさんありました。今まで見たことがないものを作ろうと、マイアミの企業とやり取りしつつ、造船所の人たちとコンサルティングをしながら進めています。工期もまったく違うので、経験値があがりますね」。仕事の話を楽しそうに語る姿から、日々満たされていることが伝わってくる。
完成したものを見たとき、クライアントが喜んでくれることが一番のやりがい。デザインは、飽きのこないもので、かつユニークであることを心がけている。「基本的に、クライアントが想像している以上のものを出すのは最低限のことだと思っています。そこで理解されないことも多々あるんですけど、共感してくれてスムーズに進むとやっぱり嬉しいですよね」。
充足した日々を送っていくなか、今後の目標を聞いてみた。現在、37歳。いずれ独立も視野に入れているのだろうか。「独立とかは特に考えていないですね。多くの興味深いプロジェクトの仕事が来ますし、いろいろやらせてもらえている現状で十分満足しています。あと、日本の仕事をしたことがないので、日本の仕事をしてみたいという気持ちは常にありますね。最近は、会社とは別に、個人的な仕事をしているので、そっちも少し増えてきたら面白いかもしれません。なかなか時間がなくてできてはいないのですが」。
仕事が忙しく、なかなか日本に帰れない状況で、時はコロナ禍に突入。なかなか日本へは戻りづらく、なかなか帰れずにいるそう。「コロナが落ち着いたら、西海岸に旅行に行きたいですね。アメリカ国内でも、まだまだ行ったことがない場所がたくさんあるので」。いつか舞い込む日本の仕事を願いつつ、NY生活はこれからも続いていく。
PROFILE
卒業後、校費留学でパーソンズ スクール オブ デザインへ進学。そこで出会った教授から、自分の会社でインターンをしないかと誘われ、そのままNYのデザイン会社bluarchに入社することに。インテリアや建築、ライティングと、空間全体のデザインを手掛ける。既に同社でのキャリアは10年以上。社長の右腕としても手腕を振るう。