News |

リアルとバーチャルの選択肢がある当たり前の世界を目指して

GRAPHIC
さわえみか
株式会社HIKKY 取締役COO/CQO、グラフィックデザイナー
/メイク・ヘア学科(現メイク・ネイル学科)卒業
バーチャルマーケットには
なんと100万人を動員

絵、ヘアメイク、メタバース……楽しいと思うことを追求していく

ソーシャルゲームのアートディレクターを務めるさわえみか氏は、キャリアをヘアメイクからスタートしたという異色の経歴の持ち主。その転身にある背景と、現在の仕事との結びつきについて伺った。
「小さい頃から絵が好きで、ふと、顔をキャンバスに見立てればヘアメイクでもいいんじゃないかと思いついたんです。でも、その時は誰かにメイクをしたこともなければ、自分でもリップを塗るくらい。ヘアメイクというより、傷メイクやペイントが好きでした」
入学時、周りはみんな美容好き。最初は浮いているように感じていたが、クラスメートに知識を共有してもらううちに、違うタイプの友人ができて面白かったと話す。

卒業後に所属したヘアメイク事務所にも慣れてきた頃、有名ヘアメイクアーティストのアシスタントになるため単身東京へ。独立後、CMの仕事に入ったとき、制作サイドから声を掛けられてコンテや番組に差し込む絵を描いているうちに、現在所属している会社の社長にヘアメイクと絵、それぞれの作品を見せる機会を得る。
「(社長が)ヘアメイクをやめて絵に絞った方がいいって言うんですよ。その時は大激怒しちゃったんですけど、そう言われる理由もわかって。」喧嘩はしたものの、社長のサポートを条件に、絵の道へ進む覚悟を決める。そんな折、ソーシャルゲームバブルが訪れた。

「私、昔からゲームが大好きだったんです。でも、社長から『お前の絵ではキービジュアルの仕事は来ないけど、ゲームを企画すれば描ける』と言われて、はっとしました」
そこから、ディレクションの学びを得て、アートディレクターへと転身。Twitterを通じて周囲のフリーランスを巻き込んだ。「クリエイターが注目を集めるにはどうすればいいのか考えて、女子だけのチームを組んで、制作過程から見せることにしたんです。この時、集団で何かを行う強みを覚えました」

ゼロからつくり上げたゲームがようやく完成したが、テレビCMは担当外。しかし、少しでいいから予算が欲しいと訴え、テレビCMのパロディをVR空間で公開することに。「それがバズって、VRの波にもどんぴしゃで乗りました。その時、リアルとは別にして、HIKKYを立ちあげたんです」
それまではリアルで出会った人とバーチャル空間をつくっていたが、VRチャット上で仲良くなった人が、“VR上に経済圏をつくりたい”と発案し、その話に乗ることにした。サークルのようなものだったが、だんだんと仲間が集まり出し、2018年にはVR空間で安全にアバターを購入できるイベント『バーチャルマーケット』を開催。大成功を収めた。

「メタバース戦国時代と呼ばれ、ワクワクもするけど、不安もあります。ただ、私たちがサブカル寄りの思考でつくってきたものと、リアルに強い人たちがつくるものって全然違うんですよ。参考にする部分は参考にしながら、自分たちのクリエイティブをつくっていかなきゃいけないと思っています。」目指すのはリアルでもバーチャルでもどちらも選べる、それが当たり前の世界だ。
「私がやりたかったことって、ヘアメイクや絵を描くことじゃなくて、根本に自分の制作物を誰かに見せて、楽しんでもらいたいって気持ちがあるんだと最近わかりました。様々な価値観に出会えたモード学園時代の経験もめちゃくちゃ活かされています。いろいろな考えを持つ人が雑多に集まった集団にいられるのって、学生時代だけですから」

※卒業生会報誌「MOGA PRESS」77号(2022年11月)掲載記事

PROFILE

さわえみか
株式会社HIKKY 取締役COO/CQO、グラフィックデザイナー
/メイク・ヘア学科(現メイク・ネイル学科)卒業

大阪府出身。ヘアメイクとして活動した後、広告・スマホゲームのアートディレクターに。その後、2017年末からメタバース空間での活動を開始。 2018年から、メタバースに身をおくメンバーとともに株式会社HIKKYの立ち上げに携り、デジタル空間での活動の体験・文化を作ることに尽力。 現在、仮想空間での自由なクリエイティブをサポートするメタバースエンジン「VketCloud」を開発中。