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“劇団四季”憧れた世界でも繋がる先輩と後輩/インタビュー

MAKE / HAIR
  • 上米良 美妃(写真:中央)
  • 池本 舞雪(写真:左)
  • 津川 実夢(写真:右)
「劇団四季」ヘアメイク課
メイク・ネイル学科卒、ヘア・メイクアーティスト学科卒
“劇団四季”
憧れた世界でも繋がる先輩と後輩

幼い頃に刻まれた舞台の感動を、今度は届ける側に

以前から舞台で踊っていた上米良氏、演劇部で舞台の裏方を志していた池本氏、特殊メイクと舞台メイクで進路を悩んでいた津川氏。3氏ともに、「舞台が好き」という理由で、高校生の頃から今の仕事を目指してモード学園へ入学した。モード学園を選んだ理由は、様々な学科とコラボレーションできること。そして、劇団四季への就職実績も決め手となった。

「まず自分は何が好きで、この世界にはどんな仕事があるのかを知りたかったし、その世界を見てみたかったんです」(津川)
「高校生の頃から、劇団四季のヘアメイクになりたいと思っていたので、就職実績があるモード学園を選びました」(池本)

今でも、東京だけでなく、希望があれば各地から積極的にインターンを受け入れている。モード学園から続く、縦の繋がりが生きているのだ。
「スペシャルゼミに私と衣裳セクションの課長で行かせていただいているので、先生とはずっと付き合いがありますし、舞台に興味がある学生がいたら先生方から紹介していただくこともあります」(上米良)
池本氏と津川氏は、ふたりとも在学中に四季によるスペシャルゼミを受講し、大きな刺激と影響を受けたという。
「仕事内容を聞いて、実際に自分がやりたいことと同じ方向なのか確認できましたし、今まで受講した先輩方が学校に残している資料があるので事前にチェックもできました。カツラを学生にかぶせてくれるのですが、本物のカツラを間近で見る機会は多くないので、より興味がわきました」(津川)
「もともと四季に入りたくて入学したので、本当に嬉しかったです」(池本)

劇団四季では、「こころの劇場」と銘打ち、全国の子どもたちを無料招待して演劇の感動を届けるプロジェクトを行っている。池本氏は、幼い頃そこに参加したことで、人生の道筋を見出した。
「先日こころの劇場に携わって、最後に俳優さんがロビーで小学生をお見送りするとき、小学生たちが俳優さんにストーリーの質問をしていたんです。ヘアメイクが話の邪魔をすることなく、みんなにしっかり届いていることがわかって嬉しかった」(池本)と微笑む。幼い頃の大きな体験を、今度は届ける側に。夢が形になったのは、そこに向かって着実に歩みを進めてきた結果だ。

明確な目標があるからこそ、歩む道が決まっていく

高校生の頃は、クラスに舞台の話ができる友人は少なかったが、モード学園に入学して同じような感性をもつ仲間たちと出会った。進むべき道が明確だった分、授業にも熱が入る。

「私はやっぱり特殊メイクの授業が1番楽しかったです。現役のアーティストの方から、プロの技術を教わりながら自分の作品をつくれる機会だったので、とても貴重な体験でした」(津川)
「歴史が長いので、いろいろな方が講義にいらっしゃって、その話を聞くのが1番好きでした。自分が今練習していることが、将来こういう人たちのようになることに繋がっていくんだと想像しやすくなって」(池本)
上米良氏が入学した時は、まだメイク学科ができて間もない頃。当時からファッションとの繋がりがより濃かったという。
「ファッションの授業も多くて、デザイン画を描いて、パターンを引いて、1年目でスカートを縫っていました(笑)。正直、なんでこれをやるんだろうと思った授業もあったのですが、衣装を知ることや人の骨格を見る力をその時に養うことができたので、今となっては全部が繋がっていて、すべてが役に立っていると思っています」(上米良)

体験入学時のファッションショーでは、スタイリスト学科とヘア・メイクアーティスト学科が共同して行う。学んでいることが違っていても、皆流行に敏感で感じるものが似ていると感じたそうだ。好きなものを通じた共通言語とコミュニケーションが生まれていく。
「ひとつの作品をつくる上で、まず技術部としての団結が必要になります。そして、俳優さんとのコミュニケーションに加え、演出家からも色々なリクエストが来ますし、演出家の意図を汲み取って逆に提案することもあります」(上米良)。
最近では、海外作品だけではなく、オリジナルミュージカルにも力を入れているので、劇団内でのコミュニケーションが尚更重要だと言う。四季は面談でもコミュニケーション力を重視するため、池本氏は在学中のアルバイトにあえて接客業を選び、コミュニケーション力の強化を図っていたそうだ。津川氏も在学中にアーティストの助っ人などのアルバイトを通じて、現在の仕事に繋げるための経験値を伸ばしていった。

舞台上では動きが激しく、日々カツラが消耗していくため、こまめなメンテナンスが必要。毛には様々な種類が使われており、色味の調節が非常に難しいそう。メンテナンスで毛を植え替えると、昔の毛と染まり具合が変わることもあるので、卓越した技術が必要となる。

キャラクターと俳優を、ヘアメイクを通じて線で繋げる

入団してからはカツラを被せる基礎を学ぶことから始まる。「5分で頭の形が出ないように地毛をまとめて、踊った時に土台のネットが動かないように被せる練習をひたすら繰り返します。大体、1ヵ月半から2ヵ月かけて劇団四季のカツラの被せ方や本番に向かう姿勢を学びます」(上米良)
海外にカツラを発注するために、頭のサイズを採寸し、ラップでぐるぐるに巻いて、生え際を描いて頭の型をとる。戻ってきたものにカットやパーマをほどこしたり、ヘアカラーしたりと細かく調整していく。すべての作業は、舞台を観る人に感動を届けるためにある。

「学生の頃はアイラインの線一本にこだわってやってきたと思うのですが、舞台ではそこまで見えません。それよりも、もっとダイナミックさが必要になりますし、静止画の時はとても美しいけれど、動いてみると合わないこともあります。俳優さんが実際に演じているところを見ながら、その表情と合わせていくことを日々学んで、キャラクターと俳優さんを線で結ぶことに1番力を入れています」(上米良)
劇団四季では、メイクは俳優自ら行う。俳優が動いている時、表情がいきいきと見えるように、その人の骨格と筋肉の使い方に合わせて、照明とメイクの相性も考えながら提案する。これも重要な仕事のひとつだ。

本部で準備をして開幕とともに劇場に行けば、そこからは劇場付きとなり、劇場との往復の毎日が始まる。入団してまもなくして、池本氏は『アナと雪の女王』、津川氏は『ライオンキング』の劇場付きを経験した。初めてカーテンコールが終わった後の感激は、今でも忘れられない鮮烈な体験だ。

「学生の時から、ひとつの作品をつくり上げるための探究心を大切にしてきました。今も、担当の演目について過去の資料を振り返るなど、今日より明日と、どこまで深く学べるかを追究しているので、モードの時に大事にしていたことが、ここでもちゃんと活かされているように感じています」(津川)
「学生の時は、ひとりで自分がつくりたい作品をつくって完結していたのですが、ここではひとりではないし、自分が好きなものをつくるわけではありません。先輩方に頼りつつ、後輩のセットを確認しながら、視野を広げてたくさんの人でひとつのものを良くしていく姿勢で臨んでいます」(池本)

土曜日は2回公演。1時間半から2時間の間に、一度使ったカツラをすべてメンテナンスして、きれいに整えてから2ステージ目へと向かう。その間は、食事をとることもままらならないが、休日や労働時間の改善も行われ、仕事にやりがいと誇りを感じている。仕事に対するまっすぐな視線から、日々の充実感が伝わってくる。

※卒業生会報誌「MOGA PRESS」79号(2024年11月)掲載記事

PROFILE

  • 上米良美妃
  • 池本舞雪
  • 津川実夢
「劇団四季」ヘアメイク課
メイク・ネイル学科卒、ヘア・メイクアーティスト学科卒

それぞれモード学園を卒業後、劇団四季に就職。上米良氏は、プレイヤーとして活躍した後、現在は課長として全体をみる立場に。2025年4月6日には、ロンドン、ブロードウェイで人気を博したミュージカル「バック・トゥ・ザ・フューチャー」が、JR東日本四季劇場[秋]にて満を持して開幕。“人生は生きるに値する”という作品のメッセージを届けるため、一丸となって開幕に向かっている最中。時代とともに変化するヘアメイクにも注目したい。