専門学校と大学の違い
インテリアコーディネーターを目指すうえで、専門学校と大学のどちらに進学するか悩む方も多いと思います。この章では、以下の3つの観点から、専門学校と大学の違いについて解説いたします。
学ぶ領域の違い
専門学校のカリキュラムは、インテリアコーディネーターに必要な知識や技術の習得に特化しています。実習や研修といった授業を通して、実践的にスキル習得を目指すのが一般的です。また、多くの場合、教育課程で資格取得を目指すこともできます。
大学では、インテリアコーディネーターに必要な知識や技術のほかに、一般教養科目を履修することができます。比較的学びの自由度が高く、自分の希望に合わせて履修内容を選択することが可能です。また、医学部や教育学部など一部の学部では、専門学校のように教育課程で資格取得を目指すことができます。
卒業後の進路の違い
専門学校を卒業後、多くの場合は、インテリアコーディネーターとしての活躍を目指して住宅メーカーや建築関係の企業などに就職します。就職活動では、取得した資格や学校による手厚いサポートが優位に働きやすく、特に業界に太いパイプのある学校は就職に強いです。また、就職せずに3年次から大学に編入する選択肢もあります。
大学の場合、卒業後の進路は選択肢が幅広いです。住宅メーカーや建築関係の企業への就職の他に、専攻分野以外の業界への就職、大学院への進学といった進路を選ぶことができます。なお、カリキュラムを通して資格を取得する学部は、就職先とのつながりがあります。
学費の違い
専門学校の通学期間は2〜4年間、大学の通学期間は4年間とそれぞれ入学から卒業までの期間が異なり、学費を比較しにくいため、以下では初年度にかかる学費の違いを紹介します。
公益社団法人東京都専修学校各種学校協会の公表した「令和5年度 学生・生徒納付金調査」によると、2023年度の専門学校(東京都)の初年度納付金は平均1,286,000円です。そのうち、入学金は178,000円、授業料は736,000円であり、その他にも実習費や設備費などがかかっています。
大学の費用は、国公立大学と私立大学で大きく異なります。
国立大学は文部省科学省によって標準額が定められており、入学金初年度納付金の平均は817,800円、そのうち入学金は282,000円、授業料は535,800円です。公立大学の学費も国立大学に準じた金額であり、それぞれ大学や学部による大きな差はみられません。
一方、文部科学省の発表した「私立大学等の令和5年度入学者に係る学生納付金等調査結果について」によると、2023年度の私立大学の初年度納付金は平均1,477,339円です。そのうち、入学金は240,806円、授業料は959,205円であり、その他にも実習費や設備費などがかかっています。
また、今回紹介したのはあくまで平均値であり、専門学校と私立大学においては専攻分野によって金額が大きく異なるため気をつけましょう。
専門学校と大学の比較
専門学校と大学を比較する際、それぞれの学校に通うメリットが気になる方も多いと思います。この章では、専門学校と大学のメリットを紹介し比較していきます。それぞれの主なメリットは以下のとおりです。
専門学校のメリット | ・実務能力が身に付き、即戦力になれる ・資格取得に向けたサポートが充実している ・専門的な学習を集中しておこなえる ・同じ目標を持つ仲間が多くいる |
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大学のメリット | ・幅広い知識を身に着けられる ・自主性が身につく ・幅広いネットワークを構築できる |
専門学校のメリット
専門学校に通うメリットについて解説します。
実務能力が身に付き、即戦力になれる
専門学校は実習環境が充実しているため、より実践的に技術を習得することができます。現役プロ講師による指導や、実際の現場での研修なども受けられ、インテリアコーディネーターに必要なスキルセットを習得できるため、卒業後は即戦力として活躍することができます。
資格取得に向けたサポートが充実している
専門学校では、カリキュラムを通して、インテリアコーディネーターに役立つ資格の取得を目指せる学校が多いです。資格取得を支援する制度を設けている学校も多く、比較的に資格取得のサポートが充実しています。
専門的な学習を集中しておこなえる
専門学校には、大学にはない学科専攻を設けている学校も多いです。自分のやりたい分野に特化して学べるため、その分野に対する深い知識や高い技術力を身に付けることができます。
同じ目標を持つ仲間が多くいる
専門学校に通う生徒は、自分と同じ職業や業種を目指しています。同じ目標を持つ仲間と刺激し合ったり励まし合ったり、切磋琢磨しながら学べる環境で、自分自身を高めることができます。
大学のメリット
大学に通うメリットについて解説します。
幅広い知識を身に着けられる
大学では、専門領域以外にも一般教養科目を履修することができるため、幅広い知識に触れて学ぶことができます。大学によっては、他学部の科目を履修することも可能です。
このように、インテリアコーディネーターを目指しながら、自分の視野を広げたり社会のルールを学んだりできるのが大学のメリットのひとつです。
自主性が身につく
大学生活は、基本的に学習面や生活面における自由度が高く、自分で選択や行動をしなくてはいけない場面が多いため、自主性が鍛えられます。生徒数の多さから、講師がひとりひとりを細かく指導することも難しいでしょう。
選択の自由さや自由に使える時間の多さを武器に、自主的に行動することで実のある4年間を送ることができます。
幅広いネットワークを構築できる
大学は生徒や講師の人数が多いため、さまざまなタイプの人と出会うことができます。また、選択授業やサークル活動などを通して、専攻分野の異なる友人や先輩・後輩と知り合うこともできるため、自分次第でネットワークの幅を広げられるのもメリットのひとつです。
専門学校と大学の選び方
これまで紹介した専門学校と大学の違いを受け、以下4つの観点に着目しながら、自分に合った学校を選択しましょう。
- キャリアプラン
- 学習スタイル
- 学費
- 資格取得
キャリアプラン
学校を卒業後、自分がどのようにキャリアを築いていきたいかをよく考え、自分のキャリアプランに応じた学校選びをしましょう。
できるだけ早くプロのインテリアコーディネーターとして活躍し、自身のスキルや専門性を高めてその道を極めたいのか、他の分野も幅広く学び将来的なキャリアアップを視野に入れたいのかなど、自分の理想のキャリアプランをよく考えてみましょう。
学習スタイル
専門学校と大学では学習スタイルも異なります。
専門学校では、専門分野を短期間で集中的に学ぶことができ、実践的な授業をより多く受けることができます。大学では専門分野と他分野をバランスよく学び、一般教養や自主性も身につけることができます。
学費
学費の違いも学校選びには欠かせないポイントです。
専門学校は国公立大学に比べて費用が高い傾向にあります。ただし、通う期間や専攻分野、学校の設ける支援制度などによっては学費を抑えられることもあります。また、4年制の私立大学は基本的に高額な学費がかかります。
学校のホームページを調べたりオープンキャンパスに参加したりして、入学から卒業までにかかる学費や支援制度を調べましょう。
資格取得
在学中の資格取得を目指す方は、資格取得に強い学校選びも大切です。
就職活動をするにあたり、その分野に関わる資格を取得していると有利になる場合があります。特に専門職の場合は、技術力やセンスなど専門性の高さを求められるため、専門学校では在学中に資格取得を目指せるカリキュラムが組まれています。大学の場合も、学校によっては資格取得を支援する制度が設けられていることもあります。
社会人からインテリアコーディネーターを目指すなら
学校や学習方法によっては、社会人からでもインテリアコーディネーターを目指すことが可能です。社会人からインテリアコーディネーターを目指し、専門学校に通う際のメリットや注意点について解説します。
専門学校なら働きながら通うことが可能
専門学校の場合、社会人でも働きながら学校に通えるよう、社会人向けのコースや支援制度などを設けている学校もあります。このような学校を選ぶことで、今の仕事を続けながらインテリアコーディネーターの勉強をする環境を整えることができます。
夜間学校やオープンカレッジ、通信教育など
専門学校は、学校によって学ぶ時間帯や学習方法もさまざまあるため、自分の生活スタイルに合った学校選びをすることができます。例えば、昼間働いて夜学校に通いたい方は夜間学校、隙間時間を活用して学習したい方は通信教育といった選び方をすることができます。また、専門学校や大学の開催するオープンカレッジを活用することもおすすめです。
「学びなおし」のメリット
社会人になってから専門学校で学び直すメリットについて解説します。主なメリットは以下の5つです。
- 資格が取得できる
- 専門知識や専門的なスキルを身につけられる
- 就職に強くなる
- 教育訓練給付金が利用できる
資格が取得できる
インテリアコーディネーターのように専門性の高い職業の場合、その分野に関わる資格を取得していると転職活動が有利になる可能性があります。
専門学校で学び直すことで、在学中に資格を取得したり、資格取得に必要な単位を取得したりすることができます。
専門知識や専門的なスキルを身につけられる
専門学校では、インテリアコーディネーターに必要な知識やスキルを体系的に効率良く学ぶことができます。実習や研修を通してより実践的に学ぶため、実際に仕事で必要なスキルを短期間で習得することが可能です。
業界とのつながりを活かし、現役のプロ講師による指導を受けられたり、業界の最新情報を取得しやすかったりするため、より多角的にスキルを習得することができます。
就職に強くなる
専門学校では、個別指導や模擬面接、試験対策などを通して、一人ひとりに合った手厚い就職サポートを得られます。また、業界に太いパイプのある専門学校は、在学中に企業に研修やインターンシップに行くことができたり、企業から多くの求人票が送られてきたりするため就職に強いです。
教育訓練給付金が利用できる
公務員は対象外になりますが、一定の条件をクリアした社会人の方は、教育訓練給付金を利用することができます。これは社会人の学び直しや転職を支援するための制度で、学費の最大70%が給付される「専門実践教育訓練給付」や、学費の20%が給付される「一般教育訓練給付」などがあります。条件に応じて利用できる制度が異なるため、ハローワークで詳細を確認してください。
社会人から専門学校に通う場合に注意したいポイント
社会人から専門学校に通う場合、以下3つのポイントに注意しましょう。
目標を明確にする
社会人から他の業界や職業に転職する場合、とくに目標を明確にすることが重要です。将来のビジョンや目標が曖昧な場合、自分にあった専門学校を選べなかったり、転職しても失敗してしまったりするリスクが高くなってしまいます。
社会人向けの募集をしている学校を探す
社会人向けの募集をしている学校は、社会人の通いやすい環境を整えてくれているため、自分の生活スタイルに合わせて勉強することができます。また、同じように社会人からインテリアコーディネーターを目指す同志が集まっており、環境に馴染みやすいというメリットもあります。
職場の理解を得る
働きながら専門学校に通うには、職場のサポートも大切です。職場の上司や同僚に、専門学校に通う目的や頻度・期間などを話し、学び直しへの理解を得ましょう。そうすることで、残業や休日出勤になって学校に通えなくなってしまうケースを防ぐことができます。
インテリアコーディネーターに求められるスキル
インテリアコーディネーターに求められるスキルは、主に以下の4つです。
- コミュニケーションスキル
- 柔軟性
- 数字への理解
- インテリアや建築への興味
コミュニケーションスキル
インテリアコーディネーターの仕事では、クライアントやお客様へのヒアリングで相手の要望を聞き出したり、設計者や施工関係者との打ち合わせで自分の意見をはっきりと伝えたりする場面があります。このように、インテリアコーディネーターの仕事を円滑に進めるためには、一定のコミュニケーションスキルが必要です。
柔軟性
インテリアコーディネーターは、クライアントやお客様の要望に沿ってコーディネートを考えます。相手の納得を得られない場合は、一度提案したコーディネートを修正することも必要です。このように、インテリアコーディネーターになるには、相手に合わせながら自分のスキルを活かせる柔軟性が求められます。
数字への理解
インテリアコーディネーターの仕事には、建物の設計図を書いたり、伝票や見積書などの資料作成をおこなったりする作業があります。このように、業務上数字を扱う機会が多いため、細かい計算や数字への抵抗感がない方がインテリアコーディネーターに向いています。
インテリアや建築への興味
元からインテリアや建築に興味のある方は、インテリアコーディネーターに向いているでしょう。
クライアントやお客様の要望に応えて柔軟にコーディネートできるようにするには、時代の流行を抑えることも大切です。そのため、インテリアコーディネーターは、インテリアや建築に関する最新情報を常にチェックしたり、展示会などに参加したりして、自身の感性や知識をアップデートをおこないます。
インテリアコーディネーターに関する資格
インテリアコーディネーターになるために必要な資格はありませんが、資格を取得することで就職を有利にしたり、クライアントからの信頼を得られやすくなったりします。そのため、インテリアコーディネーターに関する資格を取得しておくことがおすすめです。
インテリアコーディネーターに役立つ資格として、以下の3つを紹介します。
- インテリアコーディネーター
- インテリアプランナー
- 一級建築士
インテリアコーディネーター
インテリアコーディネーターとは、公益社団法人インテリア産業協会の認定する資格であり、業界内でとても有名な資格です。
試験では、インテリアコーディネーターに必要なスキルの習得を測るため、インテリア・インテリアコーディネーターに関する歴史やインテリアに関する知識全般、技能を問われるテストなどがおこなわれます。
受験資格はなく、誰でも受験可能です。気になる方は以下から詳細を確認してください。
インテリアプランナー
インテリアプランナーとは、公益社団法人建築技術教育普及センターの認定する資格です。
試験では、学科試験と実技試験を通してインテリアプランニングに必要な知識や技能の習得を測ります。ただし、実技試験を受けられるのは学科試験合格者、またはアソシエイト・インテリアプランナー・建築士のみです。
学科試験においては、受験資格はなく誰でも受験可能です。気になる方は以下から詳細を確認してください。
一級建築士
一級建築士とは、公益社団法人建築技術教育普及センターが試験を実施し、国務大臣から免許を受ける国家資格です。
試験では、筆記試験と実技試験を通して、建築に必要な幅広い知識やプランニングと管理能力、建築物を設計する技能の基礎から応用までが問われます。実技試験は、学科試験合格後に受けることができます。
一級建築士には、以下の受験資格が設けられています。
- 指定の教育機関において指定科目を修めて卒業している
- 二級建築士の資格保持舎
- 建築設備士の資格保持舎
- 外国大学を卒業しているなど、国土交通大臣の認可を得ている
一級建築士に関する詳細は、以下から確認してください。
インテリアコーディネーターの将来性
インテリアコーディネーターは将来性のある職業といえます。
具体的に、以下3つの観点からインテリアコーディネーターの将来性について解説します。
- ライフスタイルの多様化
- 住宅リフォーム市場の拡大
- 商業施設での需要
ライフスタイルの多様化
昨今、新型コロナウイルスや高齢化社会などによる影響から、人々のライフスタイルが多様化しています。それにより、住宅に快適性や安全性、デザイン性を求める方が増えており、個人宅からのコーディネート依頼が増加傾向にあります。
住宅リフォーム市場の拡大
最近では、バリアフリーやエコリフォームなど、既存住宅の改修工事の需要が増えています。このような住宅リフォームは、インテリアの機能性も考えてコーディネートを組むインテリアデザイナーの新たな活躍の場になっています。
商業施設での需要
昨今では、従業員の生産性向上を目的に、快適に働ける空間づくりに注力したオフィスが増加しています。また、SNSによる影響から、カフェやオフィス、娯楽施設にも個性的でオシャレなデザイン性が重視されるようになるなど、商業施設からの需要も増加傾向にあります。
まとめ
専門学校と大学のどちらに進学してインテリアコーディーターを目指すか迷っている場合は、「キャリアプラン、学習スタイル、学費、資格取得」を考慮したうえで選択するのがおすすめです。社会人の方は、社会人向けの環境を整えた専門学校を選ぶことで、働きながらインテリアコーディネーターを目指すことができます。
今回紹介した専門学校と大学の特徴やメリットの違いなどを参考に、自分に合った学校選びをしてみてください。